R先生 追記

あれから3日後、R先生が自ら定めた提出日の前日に電話があった。
R先生は死にそうな声で、

「昨日から胃が痛くて、今病院で点滴打ちながらかけてます。
明日の提出は少し難しいかも知れないのですが」

「いつでもいいですよ。お大事に」
と言って電話を切った。――

それから3週間が経つが、何の音沙汰も無い。
次にもし連絡があったら、僕は何を言えばいいのだろうか。
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# by kimjiyoung | 2006-07-31 18:18 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

11人目のキッカー

小学5年生の頃の話。

僕はスポーツというスポーツが全て苦手だ。
しかし通っていたのは、男子はサッカー部しかないという小さな小学校。
そのサッカー部に僕は所属していた。

ある日曜日。
外はどしゃぶり。
試合の予定だったが、中止の連絡が無いので、
準備をして待ち合わせ場所に向かった。

この雨ではさすがに休みだろうとほとんどのメンバーが来ず、
そこに集まったのは僕を含めぴったり11人。
さすがに僕が下手クソでも10人でやるということはなく、
試合に出ることができた。

当たり前だが何をしてよいか全くわからず、
40分間ただ走ってるだけで、ボールにもほとんど触れなかった。

結果は1対1。
延長無しのPK戦に持ち込まれた。

5人が蹴り終わった。
全てのキッカーがゴールを決め、サドンデスに。

6人目。
7人目。
まだ試合は決まらない。

8人目。
9人目。
僕はまだ座ったままだ。

10人目。
呼ばれたのは4年生の後輩だった。

ボールはキーパーに止められた。
試合終了。――

外した後輩は泣いていたが、
僕は何とも言えない虚無感に、
涙は流さずただ呆然としていた。

サッカー部に所属していた小学校高学年の3年間で、
出られた試合はただこの1試合だけ。

これがきっかけというわけではないが、
その翌年からドラムを始めた。
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# by kimjiyoung | 2006-07-26 18:18 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

ルーレット

前回に続いてちょっとした問題を。
今回は割と有名な話。

今持っている財産をほぼ100%の確率で倍にする方法がある。
カジノへ行きルーレットをするのだが、ただするのでは当然運任せになってしまう。
そこで赤か黒どちらかが6回連続で出るまで待つ。
そしてその次にその逆に全財産を賭けるのだ。
7回連続して同じ色が出る確率は1/2の7乗で0.78%だから、
99.22%の確率で賭け金を倍にすることができる。

当然そんなことはあるはずがない。
では、どうしてそうならないのかを40文字以内で答えて(考えて)欲しい。

答えを表示する
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# by kimjiyoung | 2006-07-20 18:09 | デジタル VS オカルト | Comments(0)

哲学

大学1年当時、哲学の最初の授業。

先生は、
「哲学とは、一言で言えばどうでもいいことを追求する学問です。
これから君達がその哲学に向いているかどうかのテストをします」
と言って、ペンを持った右手を前に出した。

「‘これはペンだ’という言葉には2つの意味があります。
一つはそのままの意味。
さてもうひとつの意味とはなんでしょう。
これが解けた人は哲学に向いています」

答えを表示する
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# by kimjiyoung | 2006-07-18 18:04 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

誤用

普段から言葉は正しく使うことを心がけている。
それが聞き手に対する礼儀だと思うからだ。

しかしこのホームページを見て愕然とした。

『-言葉の誤用-間違って使っていませんか?』

日本語は知っている方だと思っていたがとんでもないことで、
自分の使っている言葉も誤用だらけだということを知った。

こんな言葉が聞こえて来そうだ。

「通じればいいんじゃない?」
「そんなこと言ってたら何も話せないよ」

僕はこういった考え方が大嫌いだ。

例えば飲食店に行き、頼んだ品物に虫が入っていたとする。
店員がきちんと謝罪し、然るべき対応をすればそこまで気分を害すことはないだろう。
むしろその誠意に感心すらするかも知れない。
だが、「虫ぐらい入る時もありますよ」というような態度だったとしたらどうだろうか。

誤用が悪いのではない。
「正しく使おう」という姿勢こそが大事なのだ。
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# by kimjiyoung | 2006-07-15 22:28 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

誤解上等

人を家に招くのが好きだ。
皿洗いのバイトをしていた時に盗み見した技で
韓国料理をよくご馳走する。

その日は大学で同じ学部だった友人が
彼氏のI君を連れて遊びに来た。

I君も同じ大学で、関西出身の元ラガーマン。
卒業後も東京に残り、配線工事の仕事をしている。
大学時代は親しいほどではなかったが、互いに面識はあった。

ひとしきり遊んだ頃にIが、

「チヨンて気難しくて他人に厳しいって聞いてたから、
ほんまは今日来る時めっちゃ緊張しててん。
でも全然違うやん、めっちゃ話しやすいな」

と、相変わらずのハスキーな声で言った。

彼と共通の友人は何人かしかいないので、
誰がそんな事を言ってるのかはすぐにわかった。
そいつにどう思われていようが構わないが、
自分の知らないところでそんな話をされていたことには
腹が立った。

僕は誤解されやすいタイプなんだそうだ。
長年の連れが言うのだから、きっとそうなのだろう。
実際に自分には敵が多いという認識は、かなり前からあった。

僕の尊敬する養老孟司先生の本にこんなことが書いてある。

「誤解を恐れたり、誤解されて悩んだりしている人がいるが
その必要はない。
損をするのは誤解される方ではなく
誤解している方なのだから」

まったくその通りだと思った。

誰からも誤解をされないようにするのは難しい。
誤解をされない為には、深く付き合わなければいい。
つまり、誤解を恐れていては理解も得られない、ということになるのではないか。

それならばそんなことは気にせずに、
したいように自分を表現すること。
多少人に悪く思われることがあったとしても
深い理解を得たいのであれば、そうした方がいいのだろう。

僕はただ面倒くさくてそうしていたのだが、
間違っていなかったんだという結論にたどり着いた。

問題は打たれ弱さだが、
こればかりはどうにもならないかも知れない。
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# by kimjiyoung | 2006-07-13 18:04 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

映画と読書

僕は映画をほとんど観ない。
DVDを合わせても年間に4、5本程度で、
そのうち半分以上は途中20~30分寝てしまうため
ラストシーンで「え?誰この人?」ということもしばしばある。

本となると更にひどく、例えば小説の場合
生まれてから今まで最後まで読んだものが10冊にも満たない。
やっと読み始めても、大抵半分ぐらいのところでしおりが止まってしまうのだ。

映画と読書。
趣味の欄に書かれる回答の1位と2位なのではないだろうか。
映画好きや読書好きの人を否定するつもりはない。
ただ「映画はいいものだ」、「本は読まなきゃダメだ」という基準を
絶対的なものとして押し付けないで欲しいと思う。

学生の頃は特にそう思っていた。
「漫画は読むな。本を読みなさい」
「TVは観るな。映画を観なさい」
大切なのは対象ではなく、
そこから何を吸収するかなのに。

時間とお金が無限にあるとしたら、
僕も映画を何本も観て、本を乱読するかもしれない。
そうでないから常に取捨選択を迫られ、
優先度の高いものに時間やお金を費やすのだ。
僕にとってその順位があまり高いところに無い、
ただそれだけの話。

今日、時間が4、5時間空いたので、M:i:IIIを観てきた。
かなり面白く、夢中になって観た。
もちろん鑑賞中に寝ることもなかったが、

「また映画が観たい」

そうは思わなかった。
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# by kimjiyoung | 2006-07-09 18:03 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

R先生

僕の勤める字幕制作会社は翻訳をフリーランサーに外注、
社内で監修を行い、映像に埋め込んでパッケージしている。
字幕の監修とフリー翻訳者の管理が僕の仕事だ。

いつものように、翻訳者としての登録を希望する連絡があった。
電話を受けたのは同僚で、メモ用紙を僕に渡しながら
「この人、昔教師してたらしいですよ。チヨンさんの先生だったりしてね」

メモを見て驚いた。
そこには小学校時代の担任だった、R先生の名前が。
同姓同名もありえると思ったが、電話番号が同じなので間違いない。
教師を辞めたのは知っていたが、その後に就職した銀行も破綻し
職を探しているのだそうだ。

登録希望者には、まずトライアルテストを受けてもらう。
内容は30分ほどの動画と韓国語で書かれた台本を渡し、
期限内に日本語に訳して提出してもらうというもの。
ファイルの送受信はすべてオンラインで行う。
これが実はなかなか難しく、10人に1人程度しか通らない。
R先生もどうせここで落ちることになるだろうと思っていた。

提出期限日の朝、R先生から会社宛に電話があった。
「あのー、翻訳はしたんですけどね、ファイルが見当たらないんですよ。
やりなおすので、もう少し待っていただけませんか?」

耳を疑った。
仮にも元教師が、宿題を忘れた子供と同じ次元の言い訳をしている。
この時点で話にならないのだが、面倒だったので
「わかりました。じゃあいつでもいいので出来次第提出してください」
とだけ言って電話を切った。
幸いR先生は僕に気付いていないようだ。

その後、同じ日に何本も電話がかかって来る。
内容はすべてパソコンや韓国語に関する知ったかぶりの羅列。
業務に支障をきたすため、電話での問い合わせはやめて欲しいとだけ書いたメールを送り、
その日は退勤した。

次の日からR先生からの日記のようなメールが連日届いた。
呆れ、困ったが、テストの提出が無いのでこちらから断る口実がない。

そしてR先生から提示してきた提出期限が2度破られたあと、
さらにテストの素材を再送してくれとの連絡があった。
さすがにこれはもうダメだと思い、断りのメールを送信することにした。

送信が完了してから約30分後、電話が鳴った。
重い受話器を取る。

「メール読んだんですけどね、どういうことですか?
提出はいつでもいいって言ったじゃないですか!
やりとりがスムーズにいかない?
だからスムーズにいくようにこっちも色々動いてるんですよ!
テストの内容も見てないのに断られるなんて納得いきません!」

もう何を言っても無駄だろう。
「わかりました。じゃあとにかくテストを提出してください。
内容を見て連絡しますから」
と、前とほぼ同じようなことを言って電話を切った。――

R先生が担任だった小学校5年生の時、僕はイジメに遭っていた。
下校時は常に一人だった僕を、先生は車で送ってくれた。

「みんなはね、チヨンが羨ましいんだよ。
羨ましくても勝てないからみんなでイジめるんだ。
チヨンは何も悪くないんだぞ。
自分が正しいと思ったらその通りにしなさい」

ほどなくしてイジメは終り、それから何年かしてR先生は教師を辞めた。

時が過ぎ、環境が変われば人も変わる。
想い出はそのまま、変わることなく。
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# by kimjiyoung | 2006-07-08 18:02 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

テーハミング

「日韓戦だったら、どっち応援するの?」
数え切れないほどよくされた質問。

「いや、まあ韓国ですね」
いつもそうとだけ返すのだが、そんなこと聞くまでもないだろうと心の中ではつぶやいたりしている。
しかしよく考えると、国籍を変えてまで代表チームでプレイしている選手も最近では珍しくないのだし、気になる方がむしろ自然か。


6月18日(日)

FIFA W杯 ドイツ大会、韓国2戦目の相手は強豪フランス。
その日は大久保で同僚と観戦する約束をしたのだが、試合開始は翌朝の4時。
お酒を飲むのでバイクで行くわけにもいかず、終発近くの電車で移動、雀荘で時間をつぶそうと思った。

しかし雀荘がなかなか見つからない。
新宿まで行くしかないかと半ば諦めていたその時、ひとつの看板が目に入った。

「ふりーまぁじゃん ポン」

迷わずその方向に足を向け、ドアを開けると
レジに一番近い席に、僕が最も憧れ、尊敬するプロ雀士の須田良規さんが座っていた。
近代麻雀を読んで、須田プロが大久保の雀荘に勤務されているのは知っていたし、いつか行きたいと思っていた店だったので、うれしい偶然だった。

普段打っているより少しだけ高いレートに東風戦という不慣れな状況の中、なんとか財布の中身を減らすことなくゲームを終えた。

おしぼりを渡してくれた須田さんと、しばし立ち話をした。
これから韓国の応援に行くとだけ言って、僕は店を出た。

その日韓国はフランスを相手に引き分け、決勝トーナメント進出にまた一歩近づいた。


6月23日(金)

決勝トーナメント進出を懸けた一戦。
相手はスイス。
フランスがトーゴに勝つ確率が高いため、韓国は必ず勝たなければならない。

その日も朝の4時キックオフだったので、雀荘「ポン」に行った。
店に入るなり須田さんが声をかけてくれる。

「キムさんじゃないですかー」

新規の客を逃さないために店長が客の名前を覚えておくのは当然だし、僕はカタカナで名乗る時は「キム」ではなく「キン」と名乗っている。
しかしそんな事は微塵も気にならず、憧れの人の記憶に自分がいたという事が素直にうれしかった。

打ち始めて何ゲーム目だったかは覚えていないが、後ろで声がした。

「テーハミング」

声の主は須田さん。
「テーハなんとかって、何? それ」
同卓の常連らしき中年客が聞く。
「韓国を応援する時、言うんですよね? キムさん」
「はい、そうですね」

その応援を背に受けてか、僕は財布を少しだけ厚くし韓国料理店に向かった。

応援はドイツまで届かず、韓国はスイスに2-0で負けて予選リーグで姿を消した。
僕は「次はいつ麻雀が打てるのか」、そのことばかり考えていた。
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# by kimjiyoung | 2006-07-08 18:01 | 雑記・エッセイ | Comments(0)

血液型

どれほどインターネットが普及しようが、いくつのビルがそびえ立とうが、東京―大阪間の移動時間がいくら短縮されようが、
血液型と性格に関係性があると信じる人は後を絶たない。

ある人は僕にこう言った。
「チヨンさんのわがままなところ、まんまB型ですよね」

同じ人が僕にこう言った。
「チヨンさん細かいですよね。普通B型ってそうじゃないんだけどな」

なぜそうなるのだろうと、いつも考えてしまう自分がいる。
世の中には理解の出来ないことが山ほどある。
人に限って言えば、僕はほとんどの人の思考が理解できない。

その度に僕は
「幼子を殺す人のいる世の中なのに、そんな人がいても何も不思議ではないな」
こう考え、自分のすべきことに目を向けるようにしている。
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# by kimjiyoung | 2006-07-07 18:00 | 雑記・エッセイ | Comments(0)